覚悟はいいか

青山真治『金魚姫』を見た。素材がフィルムであることととデジタルであることでここまで変貌するのかという現実をまざまざと見せつけられる。『こおろぎ』に感じた違和感もここから来ていたのであろう。この人はシネマというよりも、フィルムという物質に自らの輝きを乱反射させていたに違いない。無論、すばらしいところはある。『赤ずきん』が素晴らしかったように、『東京公園』と『共喰い』にそれぞれよいところがあったように。例えば、「男は泣くな、女の涙の価値が下がる」というセリフ。劇中、同一人物により反復されることばだ。なるほど青山映画において男は泣いてはいけなかったのだ。しかし女は気持ちよく泣くだろうか。定かではない。こうしてまた青山映画への旅が始まる。

 

東京で201人が新たに罹患、世界では210万人以上、死者は3万2千人以上。首相がひどく「誤って」も少し「謝る」と同情的になり知事が強気を見せるとよくやったと誉めたたえ、強気な知事が弱みをみせると「大丈夫?」と心配してみたりする。誰かがでかい声で大胆なことを言えば、「総理になって!」などと抜かす。それがこの国。政治も生活もファッションだと思ってやがる。そんなだから喰い物にされナメられる。何度繰り返せば懲りるのだろう。チョロいって思われてるんだよ。声なんて小さくていいんだ、気高さは、虹彩のなかに、震える肩、伸びた背筋に宿り、怒りは髪の毛一本一本に、前へ伸ばされた脚に、”ポケットの中の握りこぶし”(マルコ・ベロッキオ)のなかに宿る。2020年4月17日、ぼくらはいま強い何かを持っているだろうか。

 

青山真治の新作にもうひとつ大事なことばがあった。

 

「覚悟なきものには道は開けぬ」

 

さわぐ虹彩、震えるこぶし、覚悟はいいか?