フレデリック・ワイズマン
- 『モデル (Model)』 フレデリック・ワイズマン 1980年 (129分) |****|
- 『福祉 (Welfare)』 フレデリック・ワイズマン 1975年 (167分) |****|
- 『適応と仕事 (Adjustment and work)』 フレデリック・ワイズマン 1986年 (120分) |****|
詳細は明日また。<追記:24日>
フレデリック・ワイズマンの映画は、去年だったか、今年のはじめ頃だったかもう忘れてしまったが、新文芸座のオールナイトで『DV(ドメスティック・バイオレンス)』の2本立てを見て、本当にぶったまげてしまって以来、興味津々(ちょっと気付くのが遅いよと、思われる方も多々いらっしゃると思いますが)。
『モデル』を見て、中平卓馬が『なぜ、植物図鑑か』で消費社会に蔓延するセックスのシンボルについてどうとか書いてあったのを思い出し、読み直したくなった。で、きのうから読み直そうと思っているのだが、怠惰なもので・・、明日読もうと思っている。
名キャメラマン、大津幸四郎さんが、確か土本典昭らとともに水俣の映画を撮ったとき、水俣病という病気を撮るのではなく、あくまでそこに生きる人間を撮らなければならないという確固たる決意を持って、撮影を務めたという話を、映画美学校のドキュメンタリーの講座で(前にも書きましたが、私は外部受講生で、美学校の生徒ではありません)熱く語って下さったのを聞いて深く感動したが(氏は、映画には撮っていいものと悪いものがある、何でも撮れると思ってはいけない。撮っていいものと、いけないのではないかというもののぎりぎりの葛藤の中で、あの『不知火海』の海辺で患者さんの〜さん―大津さんも土本氏もしっかり名前を覚えておられるのだが、わたしは忘れてしまった―が、医者に心情を吐露する瞬間をキャメラにおさめたという話もそのときして下さってこれまた感動せずにはいられなかった)、ワイズマンもまた、モデルを撮ることで何か別のもの、性的なもの、を共示しようとするのではなく、職業人としてのモデルやモデル志望の人間、業界の人間の美しさそのものをそのまま見せてくれる。
また、これはニューヨークシティについての最良のドキュメントの一つだと思う。
『福祉』や『適応と仕事』を見て、まあ、なんと言うか相も変わらず圧倒されたのだが、カメラの対象が英語を喋っていることにワイズマンの映画の秘密が隠れているような気がする。(ワイズマンの映画は必ずしも、言語が英語だというわけでもないのだが)それは、アメリカという国家を中心にドキュメンタリーを撮っているから当たり前といえば当たり前なのだが、単なる音声としての英語が彼の映画におけるかなり重要や要素を占めている気がしてならない。
それから、カメラと対象との距離が非常に気になる。クロースアップにはハッとする迫真性が漲るし、フルショットにもその人間の一回性というか、何というか、この人はきっとこの世の中のどこかに生きているんだろうという感じがするのだが、バストショットとウエストショットくらいだと、なんか、この人たち嘘吐いてんじゃあないの、演技してるんじゃあないのと思えて仕様がなくなる。でもこれも私の感性の問題かもしれないしあんまりいい加減なことばかり書いていると怒られそうだから、もうやめにするが、カメラと被写体との関係性も含め、随分飛躍した言い方をすると、映画ってのはとにかくすべてが対話で出来ているんだと何となく思う。演技の問題も含め、これから考えていこう。
それから、なぜかこれらの映画を見ているうちにバーバラ・ローデンの『ワンダ』を思い出したのだ。たぶんマルグリット・デュラスがエリア・カザンとの対話で発した言葉―『ワンダ』にはひとつの奇跡があると思うわ。普通、演じることとテクストとのあいだ、演じる主体と話の筋とのあいだには、距離がある。でも、あのなかではその距離が完全に消えて、バーバラ・ローデンとワンダは、直接的に、決定的に一致している<『緑の眼』河出書房新社、p203 小林康夫訳>―と関係している気がする。特に、「直接的」、「決定的」というところ。
『ワンダ』は、日仏で最前列の真ん中で見て以来、もう気になって気になってしょうがない映画で、いつか何か書いて見たいなあと思っているのに、こればかりはいい加減なことは書けないという気がしていて、それで、思い切って先ほどアメリカのamazonでDVDを購入してしまった。円高だし。
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