FROST/NIXON、MILK 

封切時に見逃したので。

フロスト×ニクソン』見応えがある。向き合って座る二人と、テレビ画面(モニター)でその二人を確認する人たちという状況は『スラムドッグ$ミリオネア』なんかと似ているが、あんなものよりもよっぽど、見ること、見られることに自覚的で素晴らしい。政治映画であるよりも、人間ドラマであるよりも、時代物であるよりも、テレビについての映画であり、顔についての映画だ。現在の視座から過去を振り返る虚構のインタビューも、虚構の装置としての映画が映画として彼らの顔を必要としたからだろう。フロストとニクソンが些かいかがわしい物まね的な演技を見せれば、逆にケビン・ベーコンなんて、そのまんま自分の顔で押し切っている感じで、おおこれは映画だ素晴らしい、と思う。ただ、レベッカ・ホールの扱いはちょっと疑問。マイケル・シーンと二人はキスすらしなかったのでは?ちょっと思い出せないけど、とにかくこの二人の間では派手なドラマが展開しない。あくまで、ラブストーリーはフロストとニクソンの間でとり行われるということか。

『ミルク』こちらも実に充実した映画。『フロスト×ニクソン』のように所謂「実際の映像」から始まる。で、時代の雰囲気をさっと伝えて、いきなり、ショーン・ペンジェームズ・フランコのキスシーン。これがすごい。この恋人との出会いのあっさり加減とどっぷり加減。映画全体はちょっと長い印象がある。ペンの演技もすごいし、演出では、伏線の作り方使い方も、まあ上手だが、何より、人の背中を撮るときに才気が発揮される。「マイクの前に立ったら撃つ」という暗殺予告を見た直後、マイクの前に立つショーン・ペンの表情もさることながら、その後ろ姿の不穏さ。終盤、ジョシュ・ブローリンを後から追う縦の移動撮影。泣かせどころ多し(こらえた)。