John Ford

『四人の復讐』は、無実の罪で軍法会議に掛けられ、不名誉除隊させられたうえ、何者かによって殺された大佐の四人の息子が、父親の名誉のためにイギリス、インド、南米、エジプトを股にかけて殺人者を探し出すという物語。母親は既に、壁に掛る肖像と化していて、父親も物語冒頭で死んでしまう。父親の役割を果たす長兄ジョージ・サンダースと、皆に愛されるが半人前扱いの末っ子に挟まれた二人、特にリチャード・グリーンが主演級で、デイヴィッド・ニーヴンが三枚目の助演を務める。『四人の息子』がむしろ四人の息子の母親の物語で息子がいなくなって行くという映画だったのに対し、こちらは親がいなくなってしまった息子たちの冒険を描く。リチャード・グリーンの彼女にロレッタ・ヤング。兄弟が二人ペアで行動し、そこにロレッタ・ヤングの縦横無尽の運動が加わる。『スターウォーズ』のようだ。


『戦争と母性』
一人息子をその恋人にとられるのが我慢ならない母親が、従軍の志願書に息子の名前を書き、結局息子は戦死、母親と息子の恋人と、彼女が宿した赤ちゃんが残され、10年の時が経つ。国が企図した、終戦10年の記念に戦死者の母親をフランスへ渡航させ、その「英霊」を弔わせるという祭典のため母親は、『四人の息子』の母親のように船に乗って(目的地がヨーロッパだから『四人の息子』とは反対だ)フランスへ行くことになる。
また、母親と息子。今度欠けているのは息子。母親がよく動くこと。主人公だけでなく、同じく船に乗った母親、あるいは乗れなかった母親、違う目的で渡欧した母親、家で待つ母親など、母親たちの物語。

『悪に咲く華』
ギャングが、戦場に行かされ、凱旋する。フォードのギャングたちはマキノのヤクザたちみたいだ。逆かな。

『虎鮫島脱出』
傑作。ヒッチコックの『間違えられた男』とか、ラングの『激怒』とかイーストウッドの『チェンジリング』みたいに悪夢のような映画。ジョン・キャラダイン怖し。