今も若いけど本当に若かったオリヴェイラが1942年につくった、教室から飛び出す子供たちの映画。ジャン・ヴィゴトリュフォーカネフスキーといった悪ガキの系譜を思わせると同時に、もっと健気なキアロスタミだったり、モリス・エンゲルの『小さな逃亡者』などをも思い起こさせる。でも、人形にまつわる秘密を知らない愚鈍な女子(かわいい女の子は愚鈍であろうとかわいい)に手を焼く男の子の物語という風に考えるならばある意味『狩人の夜』の兄妹に一番似ている。不自然な自然さとでも言いたくなる子供たちの不思議な感触の演技も『狩人の夜』のそれを想起させる。
恋が冒険と同義だった頃についての、つまり青春時代についての美しい詩篇。また同時に、不安と猜疑と嫌悪とが世界から身を守るすべを知らない子供たちに情け容赦なく襲いかかる映画、いじめっ子、いじめられっ子の映画でもあり、その子供たちのいじめ、いじめられは、教室で子供をいびる教師と、雑貨屋で店員をいびる店主とも呼応する。店主は、恐らく子供たちの青春を、あるいは少年のあまりに瑞々しく危険な恋を目の当たりにして、ある種の回心をして、「争い合うことはつまらない」なんてことをしたり顔で言ってみせ、オリヴェイラの時代への目配せを感じるが、この店主は結局は、少年でないがゆえに、かつて少年であったがゆえに、そしてただ今は大人であるというそのことがゆえに、どこまでも凡庸な人間であると思えてしまうが、それをも含め美しく感じさせる映画だった。

これは『ドラゴンボール』とそう変わらないんじゃないか。出来上がっていない。ラスト4分の1くらいの展開は好きだけど、あれで感動させるには時間の経過の重さが感じられない。冒頭に夢みる女たちの何事もない生活を田舎風景のもとに撮ってくれていたら随分良くなっていたと思う。時代ものだから田舎風景というのは難しいかもしれないけど、そこにこそこだわらなくちゃいけないし、お金もそこにかけるべき。最後の子供と父親の切り返しとか、がっかり。