2012ベスト (スクリーン篇)

1『親密さ』 濱口竜介
2『J・エドガー』 クリント・イーストウッド
3『戦火の馬』 スティーブン・スピルバーグ
4『永遠の僕たち』 ガス・ヴァン・サント
5『ミステリーズ 運命のリスボン』 ラウル・ルイス
6『スプリング・ブレイカーズ』 ハーモニー・コリン
7『3人のアンヌ』 ホン・サンス
8『グッバイ・マイ・ファースト・ラブ』 ミア・ハンセン=ラブ
9『眠れる美女マルコ・ベロッキオ
10『Playback』 三宅唱

 頭を使うことも身体を使うこともますます減って、たまに一念発起して見に行った映画に、ただ嫌になるほど圧倒されるだけの一年だったような気がしています。毎年、振り返ると見ていない映画の多さに怖じ気づき、これだけ見たのにまだ見なくてはならないのかとため息がでたりして、一体何をやっているのだろうと思いつつ、ただ目の前の空間を消失させるため、映画に没頭している時間に逃げ込むだけで精いっぱいだったように思えてきます。ただ、その消失した空間は決して本当は消失しているわけではなく、思い返してみると思い返せるわけで、そうやって思い返してみたその時間と空間に対して親密な感情を抱くことのできる恩寵に感謝をしてみてもいいのかもしれません。オーディトリウム渋谷での『親密さ』オールナイト上映から出た白んだ円山町の朝は忘却してしまうにはあまりに惜しい感動的なものでしたし、『J・エドガー』、『戦火の馬』や、『アルゴ』、『レ・ミゼラブル』に捧げたため息と涙も、無菌のシネコンのがらんどうな空間とともに長く記憶していくことと思います。1月1日に立川で出会った『永遠の僕たち』とは一生付き合っていくことでしょうし、恐らく2012年に見た映画のなかで一番上映時間の長かった『ミステリーズ 運命のリスボン』は来日したメルヴィル・プポー自身の撮り貯めた自主映画と日仏のラウル・ルイス特集の映画の数々とともに恐らく何がどの映画のショットであるかということを度外視して記憶に刻まれていくことと思います。とにかく今年は映画がとても自分にとってパーソナルな存在として迫ってきた一年でした。
 日仏のプログラムはどれも魅力的で特に春の女性監督特集でミア・ハンセン=ラブやヴァレリー・ドンゼッリの映画たちに加えイジルド・ル・ベスコの『チャーリー』、レベッカ・ズロトヴスキ『美しい棘』、ヴァレリー・マサディアンの『ナナ』等いくつもの素晴らしい映画をまとめて見ることができたのは大きな財産になることと思います。
映画祭にはほとんど通わなかったのですが、ホン・サンスハーモニー・コリン、それからベロッキオの『眠れる美女』には最大級の賛辞を贈りたいと思います。

 日本映画については相変わらずほとんど追うことができていないのですが、濱口竜介特集以外では、三宅唱監督の『Playback』と宮崎大祐監督の『夜が終わる場所』というふたつの記念すべき劇場デビュー作、瀬田なつき監督『5 Windows』、吉田大八監督『桐島、部活やめるってよ』、内藤瑛亮監督の『先生を流産させる会』には心からの拍手を送りたいです。あと、「このシリーズ、なにかもう少しアイドル的な存在がいなかったっけ」と思った瞬間画面に登場してくれた『アウトレイジ・ビヨンド』の北野武さんに限りない敬意を表します。

11『チャーリー』 イジルド・ル・ベスコ 
12『バールーフ・デ・スピノザの仕事 1632-1677 』 フランス・ファン・デ・スターク
13『Saudade』 ジャン=クロード・ルソー
14『ライク・サムワン・イン・ラブ』 アッバス・キアロスタミ
15『Virginia/ヴァージニア』 フランシス・フォード・コッポラ
16『アルゴ』 ベン・アフレック
17『彼女は愛を我慢できない』 ヴァレリー・ドンゼッリ
18『すべては許される』 ミア・ハンセン=ラブ
19『何かが・・・』 メルヴィル・プポー
20『大地の時代』グラウベル・ローシャ
21『灰と血』 ファニー・アルダン

 あいも変わらず21世紀なので21本選びました。プポーやミア・ハンセン=ラブ、ファニー・アルダン、レア・セドゥらの来日、同志社大学のルソー特集、そしてもちろんストローブの新作と、ちょっと途轍もない、怒涛の一年でした。

2012ベスト (自宅篇)

1『恐怖分子』 エドワード・ヤン
2『カンタベリー物語』 マイケル・パウエルエメリック・プレスバーガー 
3『棒の哀しみ』 神代辰巳
4『ウインターズ・ボーン』 デブラ・グラニ
5『ザ・タウン』 ベン・アフレック
6『中国は近い』 マルコ・ベロッキオ
7『ラブ・アゲイングレン・フィカーラジョン・レクア
8『スリーデイズ』 ポール・ハギス
9『ブラック・サンデー』 ジョン・フランケンハイマー
10『アメリカを斬る』ハスケル・ウェクスラー
11『悪の華』 クロード・シャブロル
12『塔の上のラプンツェル』 バイロン・ハワード&ネイサン・グレノ

そうなんです、『恐怖分子』も『棒の哀しみ』も初めて見たんです。

2012ベスト (再見篇)

1『カリフォルニア・ドールズ』 (バウスシアター) ロバート・アルドリッチ
2『白夜』 (ユーロスペース) ロベール・ブレッソン
3『ロバと王女』 (日仏学院) ジャック・ドゥミ
4『テトロ』 (爆音映画祭@バウスシアター) フランシス・フォード・コッポラ
5『アガタ』 (k’sシネマ) マルグリット・デュラス
6『断絶』 (オーディトリウム) モンテ・ヘルマン
7『ラブ・ストリームス』 (イメージフォーラム) ジョン・カサヴェテス
8『愛の残像』 (イメージフォーラム) フィリップ・ガレル
9『パサジェルカ』 (イメージフォーラム) アンジェイ・ムンク
10『タイタニック 3D』 (むさし野ミュー) ジェームズ・キャメロン

以上です。今年もよろしくお願いします。

2011年ベストのリンクも貼っておきます→http://d.hatena.ne.jp/zom3/20111231