安西水丸さんが先月に亡くなっていたと今の今まで知らなかった。WOWOWで放映された『ザ・マスター』の「W座からの招待状」での小山薫堂さんの安西さんへの手紙の冒頭だけをみて、まさかと思って慌てて調べたら、こんなことになっていたとは。
 あのお二人のやり取り、回によってだいぶクオリティも上下していたし、時にはそれはちょっとと思うような文章や、感想しか聞けないときもありしばしばがっかりもしたけど、でも基本的にどうってことない話をしているだけなのに、女優の話になるときにぐっと良い一言がでてきたりして、さらには女優を描くときの安西さんのイラストはやはり不思議に魅力的だったりもしたのでいつも見ていました。
 それくらい調べてから来ればいいのにって思うようなことも知らないことを知らない、わからないことをわからないという、知ったかぶりのない、非常に肩の抜けた雰囲気勝負的なトークは、悪くいえばいくらでも悪くいえるだろうけど、でも映画を広く届ける仕事、言葉で遠くに届ける仕事としては、こういうお二人の映画との距離感、映画への態度、お二人のお互いへの距離感から発せられることばのやり取りは、批評的スタンスとしてありなんだなって最近は頓に思えてきていました。同じようにやろうとしてもなかなかできるものではない。番組の案内役としても本当に良い企画だったと思うし、何より良いコンビだったと思う。どうか安らかに。