ジャック・ロジエと桃まつり

  • 桃まつり 壱のうそ』 竹本直美 増田祐可 福本明日香 船曳真珠 2010/JP

『メ―ヌ・オセアン』はジャック・ロジエの天才を確信させてくれる快作だった。

桃まつり 壱のうそ』

それぞれのフィルムに大なり小なりの弱点と、賞賛すべき輝きがある。ただ、生意気な言い方をすると、脅威を感じさせるような、人を嫉妬させるような映画は紛れ込んでいなかった(1月に開催された「未来の巨匠たち」の桝井孝則と三宅唱の映画にはそれをひしひしと感じさせるものがあった)。
ともあれ、水準は確かに高く、『迷い家』と『テクニカラー』は特に良かった。『迷い家』は、吉本隆明が「共同幻想論」で柳田国男を引いて指摘した日本古来の奇談を思わせるがゆえにすっきりまとまりすぎているような気がしないではないが、この決して怪奇じみない妖しさは一見の価値あり(画面は明るく、音は怪しくという姿勢)。『テクニカラー』のマジックショーは、やっぱりリヴェットなのかな、アメリカ映画も良く見てる感じがする。自主映画で予算の関係もあるだろうから、できるだけ長回しっていう映画が多い中、大胆にカッティングをしているのが好感持てる。洞口依子が階段から転げ落としたボストンバッグから、手がとろりと出てくる冒頭から飽きずに見せる。前半は洞口さん一辺倒で、頼りすぎな気がするなと思い始めたところで、後半洞口を画面から奪ってしまうしたたかで勇気ある戦略もえらいと思う。
バーブの点滅と』の果敢な失敗も、『shoelace』の台詞主導な感じも(「協力」というクレジットに荒井晴彦稲川方人の名前があるのを複雑に思いながらも)、それぞれ支持したい。

DVD化されるかわからないし、それぞれ音を意欲的にいじっていて映画館で見てこそ効果ありという演出がなされているので、東京に住んでいる方は足を運ばれたし。壱のうそは17日(水)まで。明日は洞口依子トークに来るとのこと。