2016年ベスト

一昨年は10本も映画見なかったのではないかというありさまでしたが、去年ラスト四半期くらいから徐々に本当に徐々に映画館へ足を運ぶようになって、そこで出会う皆様もあたたかく接してくれて、感謝でした。ただ人付き合いがやはり億劫というかひどく苦手であって、なかなかむしろそれもあって上映施設から足が遠のいたということもあったので、どうか温かい距離で見守ってください。ってそろそろほんとに良い年になってしまった男が言うのもなんですが。

1 『ハドソン川の奇跡』 クリント・イーストウッド

2 『追憶の森』 ガス・ヴァン・サント

3 『この世界の片隅に』 片瀬素直

4 『ダゲレオタイプの女』 黒沢清

5 『クリーピー』 黒沢清

6 『ザ・ウォーク』 ロバート・ゼメキス

7 『オデッセイ』 リドリー・スコット

8 広島国際映画祭

9 ジャン=クロード・ルソー特集@アテネフランセ

というわけで6,7あたりはまともに映画見てたらさすがに入ってこない、苦渋のパーソナルベストテン(ナイン)。広島国際映画祭では短編が多かったけど12,3本は見て、『物質の演劇』等々、よい体験でした。それからフランソワーズ・ルブランさんの喫煙タイムに無理言って写真撮って頂けたのは赤面とともに永遠に思い出される最高の思い出でした。その節はごめんなさい。ルソーの東京初レトロスペクティヴもやはり快挙だったのでしょう。関係者諸氏とだれよりルソーさんに敬意と祝福を!

スピルバーグの昨年公開の2作の緩さについては少し考えたほうがいいのかもしれない。『戦火の馬』をほめたのであれば、ほんとはきっと無視しちゃだめだよね。でもとりあえずノーコメントを貫くことしか…。

黒沢清は、出来で言えば『クリーピー』は傑作と言って問題ないものだったと思うけど、妙に残るのは『ダゲレオタイプの女』のほうでした。今後もっと好きになる予感あり。小津がどうのとか溝口がどうのとかっていうより、ホン・サンス的無国籍感を出していける現状日本で唯一の監督だと思いました。純粋に結婚式のシーンは美しかった。

1と2は私のなかでは盤石でした。『ハドソン川』は映画作りの格好のテキストになるだろうし、『追憶の森』は『永遠の僕たち』を更に押し進めてそれなのに厳しくならない、やさしい映画でした。

そして一番の驚きは『この世界の片隅に』ですね。のんちゃん天才。一番最初の「人生はにゃんとかなる」を読んだときのような印象です。最高の才能に恵まれているかどうかわからないけどとにかくスタッフひとりひとりがベストを尽くしたよねっていう、それが映画の内容と見事に調和していて本当に親密に感じられるラブストーリーでした。こんなに原作への敬意を感じる漫画の映画化ってそうそう出会えるものではないはず。力強く、厳しく、やさしかった。

1枠空いてしまったけどスコリモフスキとかエルマンノ・オルミとか、そして個人的になぜだか乗れなかった『キャロル』とかどうしても入れる気になれず。

イオセリアーニを見ていたらちょうどよい塩梅にまとまったことでしょう。

というわけで今年の初めはイオセリアーニか『ピートと秘密の友達』あたりから始めたいと思っております。今年もよろしくお願い致します。