突然の訪問者

  • 『突然の訪問者(訪問者たち) (THE VISITORS) 』 エリア・カザン 1972/US (88min.) |****|

カザンの自伝に出ていてかなり気になったので思い切ってamazon.comマーケットプレイスでVHSを購入。日本未公開のようだけど、一応『突然の訪問者』という邦題があるようだ(『訪問者たち』という題も目にするが、どちらが一般的なんだろうか)。撮影兼制作者のニコラス・T・プロフェレス(発音としてはプロファースのほうが正しいと思うけど、allcinemaデータベースではプロフェレスとなっている)は、『ワンダ』や『鹿が好きだった少年』の撮影、編集も担当している(『ワンダ』ではカメオ出演もしているらしい)。インディペンデント映画ならではのスタッフワークという感じだが、重要な担い手の一人だったことは間違いない。それだけでなく、カザンの自伝によると、彼はバーバラ・ローデンとかなり気が合ったらしく、仕事での協力関係以上の関係だったらしい。カザンは彼の自伝では確かニックと彼を呼んでいたが、何とはなしに、あくまで元妻と仲が良かった奴という書き方で、あんまり評価しているようには感じられない。

雪に覆われたアメリカの田舎(ロケーションはコネティカット)に住むジェームズ・ウッズ一家のもとに、ベトナム帰還兵で、彼と同じ部隊にいた男二人がやってくる。妻は彼らを接待するが、夫は浮かない顔だ。それもそう、彼らはかつて、ベトナムで少女を凌辱した罪を、ウッズに告発された過去を持っていたのだ。彼らは何しに来たのだろうか・・・。というのがストーリー。

撮影の無骨さに時折驚かされるが、特に登場する唯一の女性パトリシア・ジョイスをめぐる男たちの執拗な視線が、映画の緊張感を一手に引き受けていて素晴らしい(特にミニスカートへの視線)。ベトナム帰還兵の心の傷をめぐる映画なわけだが、それよりもむしろ、パトリシア・ジョイスが演じる、帰還兵(ジェームズ・ウッズ)の妻の心の揺れが、そのまま映画を揺らしている。しかもその揺れが、演技によって、というよりも、撮影によってもたらされる(カメラに向かってジョイスが歩いて異様にカメラとの距離が縮まるところは動揺させられる)。脚本はカザンの息子のクリス・カザンが書いているが、即興がどれくらいあったのか気になる。カザンの映画をそんなに見たことがあるわけではないけれど、異色作であることは間違いなさそうだ。

IMDbトリビアによると、ベトナム戦争をシリアスに取り扱った最初のフィクション映画としてよく引き合いに出されるとのこと。ジェームズ・ウッズの俳優デビュー作でもある。
パトリシア・ジョイスはローデンに結構似ている。ローデンの器量を2割くらい悪くした感じ。

ローデンDVDを発送したとのメールが届く。さすが、as soon as possibleと豪語しただけのことはある、よしよし(amazonとかに比べたら全然遅いけど)。