念願叶って見ることができた(Tさんありがとうございました)。ルイーズ・ブルックス主演の映画だと思っていたから彼女の扱いに結構驚いた。超神話的な女優で、『パンドラの箱』のルルのイメージが強かったから、ケチなサーカスの飛び込み嬢(?)として登場し、ケチな(しかし美しい)女のまま映画が進行するとは思いもよらなかった(『パンドラの箱』は1929年の映画)。だからブルックスは眩いばかりのファム・ファタルぶりを見せるでもなく、むしろスターはヴィクター・マクラグレンであるからして、彼女はロバート・アームストロングとの友情物語を引き立てる役回り。しかしこんなに殴り殴られ、また殴り、で押し切る映画もそうそう見られるものではない。『ロッキー』より破壊力を感じる。帽子の映画でもある。

あとマーナ・ロイが「a girl in China」としてさりげなく登場する。

どうやら裏切りやなんやらひしめくギャング映画かと思って見始めたら、これが最も危険な映画であることにすぐに気付かされる。命からがら脱獄した主人公が荒野を彷徨っていると、普通ならば警察隊にでも追われて一悶着、というシーンにでもなりそうなものだが、それどころか不意に管制塔のような施設の内部から漏れてくるカウントダウンによって、一気に言葉にしつくせない不穏な空気、決定的な間違いを犯してしかもそれが決定的に手遅れであると全身で感じ取れてしまうようなそんな空気が流れる。なんか、やばい、砂漠に科学者、これは、なんかやばい、最もやばい、これはあれか?と、ロン・ランデル扮するエディー・キャンデルが気付くのと恐らく同じタイミングで観客も、その危険に気づくや、カウントダウンはゼロを数えて、かくして最も危険な爆発の下、実験施設の窓を叩くキャンデルが空しく倒れる。ところが彼は死なずに、代わりに、原子力に異常な影響を受けた身体は鋼鉄と化し、なんと銃弾をも跳ね返す超人となってしまう。こうして眩しすぎる光に晒されたキャンデルが、かつて自分を刑務所送りにしたギャングへの復讐心と核爆弾の2つの炎に身を焦がして、立ちあがり、最も危険な生き残りとして職務を果たす。
こんなものを遺作に持つアラン・ドワンはやはり最も危険な映画作家の1人と言う他ない。