拳銃の報酬

 ロバート・ワイズの一風変わった犯罪映画。銀行強盗をやってのけようというのだが、かつてのハリウッドのギャング映画のように派手にやらかすのではなく、一人の退役警察官エド・ベグリーが、借金を背負った黒人の歌手ハリー・ベラフォンテと、明らかに黒人と仕事をすることを快く思っていないロバート・ライアンとを計画に引き入れ、三人で地味にやろうというのだ。人選を間違ってるんじゃないのとしか思えないのだがとにかくこの三人でやろうと(ベラフォンテのほうでもライアンを軽蔑しているが、その蔑視と両者がお互いに募らせる不信感が映画を通して丁寧に描写されていく)。二人とも、最初は乗り気じゃないのだが、借金やらやむにやまれぬ事情で結局やることになる。このやることになるまでの待機の時間というか、煮え切らない時間の描写が素晴らしい。特にべラフォンテがナイトクラブで歌うシーンや娘とメリーゴーラウンドに乗るシーンなどささやかな生活描写に、借金とりたての脅威が絡んで映画が確かに進行していく。ライアンのほうでも、シェリー・ウィンタースとの生活に、なんとグロリア・グレアムが絡んできて、ライアンの不満の鬱積を見せながら映画に官能が添えられる。
 待機の時間といえば、犯行前にそれぞれの束の間の時間を過ごす静かなシーンも素晴らしい。べラフォンテが水面に女児の人形が浮かんでいるのを見てハッとすると、所変わってライアンは猟銃でウサギを撃ち殺す、すぐさまカメラは一人寂しく佇むべグリーの方へ。三人の映画だが、三人はバラバラなのだ。辛うじてべグリーを介して繋がっている三人の関係が、変化せざるを得ない事態になったときの映画の時間の急転直下。敵はどこにいるのか、誰のために何をしているのか、と思いながら見ざるを得ないのだが、そういった疑問に対する残酷で衝撃的な答え=報酬が最後に待っている。
 ジョン・(アーロン・)ルイスが担当している音楽も印象的だ。