ジャック・リヴェット
蓮實重彦の『誘惑のエクリチュール』や、『死ぬまでに観たい映画1001本』の『木靴の樹』の項でクリス・フジワラが言及している、オルミの初期作を見たいなあ。データベースのallcinemaを見ただけでは、あたかも『木靴の樹』が彼のデビュー作であるかのように思えてしまうが、IMDbによると、彼は1953年に22歳にして監督デビューして、現在までにテレビ作品を含めると62本も監督しているらしい。
- 『地に堕ちた愛 (L' AMOUR PAR TERRE)』 ジャック・リヴェット フランス 1984年 (125分) |****|
- 『美しき諍い女 (LA BELLE NOISEUSE)』 ジャック・リヴェット フランス 1991年 (237分) |**|
- 『ジャンヌ/愛と自由の天使 (JEANNE LA PUCELLE: LES BATAILLES)』 ジャック・リヴェット フランス 1994年 (118分) |****|
どれも変な映画。ウィリアム・ルプシャンスキー、パスカル・ボニゼール、ジェーン・バーキンなどが常連スタッフ、キャスト。『アウトワン』、『狂気の愛』、『恋ごころ』、『パリはわれらのもの』、『デュエル』、『セリーヌとジュリーは舟で行く』など何も見ていない。見たい。『ランジェ公爵夫人』も見ていない。レンタル屋さんですぐ借りられるものくらい近いうちにまとめて見るか。
- 『ジャンヌ/薔薇の十字架(JEANNE LA PUCELLE: LES PRISONS)』 ジャック・リヴェット フランス 1994年 (122分) |****|
夜中に続編。史実としてよりも、むしろ映画史の中で最も有名な殺しの物語の一つだろう。これが90年代につくられなければならなかったのはどういうわけなのか知らないが、リヴェットなりの映画史ということなのかしら。338分の完全版が存在する。
画面の中の黒い色の圧倒的な強さ。黒い服装をした司祭、黒い十字架、黒煙、挿入される黒画面。弧を描くように移動して、その移動と逆方向にパンをする、まるで舟にでも乗って、通り過ぎる景色を振り返って見るかのような流麗なルプシャンスキーのカメラを見るだけで面白い。既に十分に語られている物語の不可逆性に対する、湿った感情と無力感とを、このカメラワークと、画面に蔓延る黒い物体が物語っている。火刑台に向うジャンヌの足の大写しが2ショット挿入されているが、これはブレッソンの『ジャンヌダルク裁判』を思わせる。前半はむしろ『たぶん悪魔が』とか、ロメールの『聖杯伝説』とかを思い出したのだが、だんだん湿度の高い陰鬱さを帯びていく。特に、火刑の宣告をされたジャンヌが、突如、叫び声をあげて、「私のからだが灰になるなんて、汚れを知らないからだなのに」と嘆くあたりは、リヴェットか脚本のクリスティン・ローランとボニゼールの趣味じゃあなかろうか(違ったらすみません)。それにしても、今日見たリヴェットの映画で、女性が不意にけたたましい笑い声や金切り声を発する場面が何度か見られたが、どうもこれだけは好きになれない。
ところでこの映画って、あまり語られたり、書かれたりしているのを見たことも聞いたこともないが、かなり不評なのかな?リヴェット映画の中では、相対的に良くない部類ということなのかな、それとも絶対的に良くないのかしら、わたしは結構好きなのだが、何か自信なくなってきた。そもそもリヴェット自体があんまり人気がないんだろうか。
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